中国武術家・血闘記録 ~ 華拳・蔡龍雲~②

14歳の蔡龍雲の対戦相手はロシアのマスロフ。蔡龍雲は試合当日、高級ハイヤーで堂々と会場入り。

蔡桂勤たちは、日頃は質素な生活をしていたのですが、見栄を張ってハイヤーで駆け付けたんですね。それだけこの試合に掛ける意気込みが半端なかったってことです。

ハイヤーで会場に到着して運転手に料金を払おうとすると、「わしらのために戦ってくれるのだから、料金はいただけません。帰りもお送りしますよ」と運転手。

 

では場面はリング上。レフェリーに手招きされて、蔡龍雲、マスロフがリングの中央で相手と向き合ったとたん、蔡龍雲は試合開始と間違って、ポカリと一発相手の横っ面を殴ってしまいました。相手は、目を白黒させ唖然。会場は大爆笑となり、蔡龍雲は間違いに気づいて恥ずかしさでいっぱいとなりました。

そんな経緯を経て、いよいよ本当の試合開始です。二人ともグローブを胸の前に構えて、ジリジリと寄っていきます。これから打ち合いが始まるかと見えた瞬間、蔡龍雲は右足をブーンと高く振り回した。ふつうの回し蹴りではなかった。

蔡龍雲のこの時の回し蹴りは、ふつうの回し蹴りと違って内側から外側にあおるように蹴った。

この画像の2の蹴りがそうですね。太極拳でいう「擺脚(はいきゃく)」。牽制技としては有効な蹴りかもしれません。この蹴りがマスロフの顎にヒット❗️マスロフはそのままドーンとぶっ倒れました。

しかし決定打とならず、すぐに起き上がってきました。起き上がったマスロフは猛然と打って出ました。

マスロフの激しい攻撃を素早い反射神経でさばくと、ガッと踏み込んで今度は肘打ちと連続技で、再びダウンを奪いました。

 

この画像は、その当時の試合の様子を42年後に解説して説明していただいたものです。一発目は、自分の前手で外側から回し打ち、相手が受けるとその手を翻して内側から裏拳。外から内から連続して顔を狙われると中段に隙ができそうです。

そこへ体当たりのように体ごと入って、同じ腕で肘打ちを食らわします。

マスロフも粘って猛攻を続けますが、それを避けて果敢に相手の懐に入っては連続攻撃を仕掛けていきます。蹴りも上述の蹴りからの連続攻撃があります。最初の一枚ともう一枚を見ていただくと三つのけりの連続攻撃がわかると思います。

まず、一発目を内から外に振り回し、その足を地に着けないで真っ直ぐ 相手の腹や顔面に蹴りを放つ。これで相手が崩れたところを体を横向きにした勢いで決め手の横蹴りです。

さて、試合に戻りましょう。マスロフの猛攻に対し、連続攻撃で相手を倒すたびに、観衆が怒涛な歓声をあげます。会場は興奮の渦です。

蔡龍雲は連続攻撃で結局13回ダウンをマスロフから奪いました。ただ倒しても倒しても起き上がってくるマスロフ。試合時間も残り1分となったとくに、ただ倒すだけの連続技ではダメだと思い、父(蔡桂勤)から授かった技を放ちました。

これは、左拳で左顔面に耳打ちの牽制をし、それを防ごうとしたマスロフの脇腹にボディブローを打ち込みKOしました。

14歳の少年がロシア人ボクサーをノックアウトしたのですから、会場は大変な興奮に陥りました。

この試合は上海のビッグニュースになり、上海の新聞で「神拳大龍、出現す」と報じました。この画像が実際のノックアウト写真です。

結局、この上海の武術の対抗戦は5勝2敗1引き分けで中国の大勝利に終わりましたが、ノックアウト勝ちは蔡龍雲だけだったといいます。

蔡龍雲老師が日本の武術雑誌のインタビューで当時のことを振り返って「審判は全員外国人で、中国側に不利だった。二敗した試合も私から見れば決して負けていなかった」と語っています。

さて、マスロフとの因縁は、蔡龍雲17歳のときに再び訪れます。


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