睡眠のメカニズムについて考える②

前回の《睡眠のメカニズムについて考える①》

睡眠と覚醒には脳がそれぞれ全く異なるモードに切り替わることで起こっている。そのスイッチがスムーズだと睡眠障害も起こりにくい。スムーズでないと、睡眠と覚醒のタイミングが狂ったりして維持できなくなるが、それを維持する物質が存在すると、前回言いました。

その物質がオレキシンという神経ペプチドです。オレキシンにより睡眠障害のメカニズムも明らかになってきています。

例えば、健康人であればあり得ないような状況で突然、耐え難い眠気に襲われて眠ってしまうナルコレプシーは、オレキシンを産生する神経細胞が消滅してしまっている結果起こる症状です。

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【不眠症はオレキシンが過剰に脳内に存在してしまっている】

本来睡眠を取るべきなのに、過剰のオレキシンによって脳が覚醒モードで過剰に固定されてしまっているといえます。

脳が覚醒モードで固定される必要があるときというのは、例えば、火事のときに寝ているわけにはいかないですし、すごく楽しみにしているイベントの最中には誰も眠らないでしょう。

つまり、強い衝動や感情が覚醒を生んでいるという側面があります。感情を司る大脳辺縁系とオレキシンは密接な関係があって、恐怖や幸福感などの顕著な衝動があるとオレキシン系が駆動されて、脳が覚醒モードで固定されてしまいます。

不眠症をオレキシンとのかかわりでメカニズムを説明すると、患者の脳内では何らかの不安や恐怖などの強い衝動が睡眠を取るべきときにもずっと発動していて、その結果として覚醒が固定されてしまって眠れないということになります。

こうしたことが繰り返し起こっていくと、「眠れない」ことそのものが恐怖の対象になっていきます。不眠症とは「眠れないこと」に対する恐怖症なのです。

「今日も眠れないんじゃないか」「寝不足になったら明日は大変だ」などと毎晩眠れない不安や恐怖を体験していると次第に、寝室自体、寝るという行為そのものが恐怖の対象になってしまいます。

眠れないことへの恐怖が情動記憶として刻み込まれて、睡眠に関するあらゆるものが恐怖やこだわりの対象になってしまうのです。

 

【現在の不眠症治療(薬物療法)について】

現在使われているベンゾジアゼビン系、Z系の睡眠導入剤はGABA-Aという受容体に作用し、GABAの働きを促進させることで、覚醒系の神経(ニューロン)を抑制して、睡眠モードに持ち込むという仕組みになっています。108 GABAa受容体13

脳の機能全体を低下させるので、情動を司る機構も抑制されて抗不安作用を得ることができるが、運動や認知といった機能も全部落ちてしまうことになるデメリットがあります。

 

そこで、昨年、先ほど述べたオレキシンの作用を阻害するオレキシン受容体拮抗薬スポレキサント(商品名:ベルソムラ)が発売された。これはオレキシンの働きだけを弱めるので、上記のような従来の薬剤にみられる認知・運動の機能低下といった副作用のリスクを低減しながら、睡眠を促す効果が期待できます。

ただし、ベンゾジアゼビン系の薬物と違って強制的に脳機能を抑える作用はなく、自然な眠りを促すという働き方をするにで、主観的に薬の効果を弱くに感じる場合があるが、客観的にはベンゾジアゼビン系の薬物に匹敵する効果が得られるとされています。

 

今回、専門用語が多く、わかりにくいかもしれませんが、大体がわかれば結構です。

次回は、我々の生活に密着した「快眠法」や「睡眠時間」について考察していきたいとおもいます。

 


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