寸勁の科学的分析と解明②

衝撃力発生の原理とフォーム

この節では、なぜ極端な近距離から突き、それも力積の大きい突きが出せるのかを説明します。

【図2】

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図2はキックボクサー(前回に表1とは別人)の逆突き動作中の身体各部の水平速度の時間変更である。

20100304_667545膝や腰など下半身が先に動き、その後で上半身が動く。上半身も肩・肘・拳と身体中枢から末梢へと動きが伝わる。筋肉の多い下半身と胴体の動きで加速し(一段ロケット)、その肩から腕を突き出す(二段ロケット)と考えればよい。

逆突きで腕を加速するエネルギーのうち約2/3が腕以外すなわち下半身と胴体から出ていることが吉福氏の実験で明らかになった。つまり、突きはエネルギー的に腕自体より足腰で突くのである。

【図3】

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図3は中国拳法選手の掌撃についての動作分析の結果である。

身体各部位の動く順序は図2とほぼ同じである。

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異なるのは、下半身が前進している間、腕は逆に後退する点である。そしてその後に急に前進に切り替わる。掌dけ見ればぷるっと震えるように瞬間的に加速される。図2よりも下半身と胴体のエネルギーの重要性が大きい。

寸勁は腕で打つのではなく足腰で打つ、と言える。

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このように、突きの主なエネルギー源は腕自体より足腰にあることが分かった。

さて、突きはランニングなどと違い一回限りの動作である。すなわちどの筋肉も一回しか収縮しない。筋肉が一回収縮する間に出せるエネルギーは限られてている。従って、突き動作中に出せるエネルギーはほぼ一定と見なせる。

発生したエネルギーは身体各部位の運動エネルギーとして蓄えられる。普通の突きでは運動エネルギーの大部分は腕に集中する。体当たりなら全身が動くエネルギーになる。

力学の式によると、さまざまな重さ(質量)の物体が一定の運動エネルギーを持つとき、運動量は物体の重さの平方根に比例する。

例えば片腕の質量が肩の一部も含めて全身の1/16とすると、全エネルギーを腕に集中した突きに比べ、全身での体当たりの力積は突きに4倍になる。つまり体当たりの力積は突きの4倍になる。

実際には突いた腕の各部分が同じ速度で動くことはあり得ないので、これはあくまでも単純計算だが、基本的な傾向として正しい。

中国拳法選手、特に拳法家の寸勁の力積が大きいのは、エネルギーを腕だけに集中せず胴体を中心とするほぼ全身に蓄えたことによる。

 

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次回に続く。


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