F1メカニック講座 熱交換器

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2014年に導入されたパワーユニットによって、 熱交換機は一気に複雑になりました。
熱交換機について今回は書いてみようと思います。

2013年までのエンジン・2.4ℓV8エンジンにKERSを加えたパワーユニットに必要な熱交換機を整理してみると
ウォータークーラー、エンジンオイルクーラー、ギヤボックスオイルクーラー、バッテリークーラー、KERS制御ユニットクーラー、MGU用クーラー、
ハイドローリックオイルクーラー e.t.c

エンジンやギヤボックスに関する熱交換機の種類は旧パワーユニットも新パワーユニット(2014年型)もたいして変わらない。

KERSに関する熱交換機は、それぞれのシステムによってバリエーションがある。
バッテリーは空冷だったり、KCUは熱交換機も空冷ではなく水冷であったり、MGUはエンジンオイルの冷却系統と共用したりといった具合に。

そこで、フェラーリ製パワーユニットの熱交換機レイアウトのイラストを参照し、見てみてみましょう。

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《2013年までのクーリングレイアウト(エンジン冷却水のみ)は1ラジエーター》

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《2014年型はインタークーラー(ターボチャージャーが圧縮した空気を冷却する装置)が追加したこと》
空気は圧縮すると熱を持つ。熱を持ったままの状態で空気をシリンダーに送り込むと、ノッキング(意図しない燃焼)が起き、エンジンの性能は低下してしまう。
だから、適温に冷やしたい。空気が通るチューブとチューブの間を外気が抜けることにより、外気に熱を奪ってもらうのが空冷式熱交換機の原理である。チューブとチューブの間にフィンを設けるのは、外気に触れる面積を増やすためである。
オイルや水が循環する熱交換機も基本構造は同じ。
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冷やす手段としては空冷式のほかに水冷式もある。F1マシンでは空冷式が一般的。
2014年のイラストを見ると、左サイドに巨大なインタークーラーがある。
2013年までは、ここに図のようにラジエーターが存在していて、左サイドにラジエーター、右サイドにエンジンオイルクーラーを配置するのが一般的であった。
ところが2014年型はインタークーラーが左サイドに配置されたので右サイドにラジエーターを配している。エンジンオイルクーラーはラジエーターの下部に追いやられ、限られたスペースを2つの熱交換機で分け合うことになった。

これは2013年型エンジンは2.4ℓ・v8、対して2014年型エンジンは1.6ℓ・v6なので容量が小さくてすむから出来るレイアウトであり、さらに2.4ℓ時代は750馬力前後を発生してたが、1.6ℓエンジンは600馬力相当で出力が2割低いので、そのぶん発生する熱も小さく、冷却の負担も軽くて済むということも理由である。
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そうはいっても、エンジンカウルの下は過密であり、熱交換機をコンパクトにする取り組みは欠かせない。
熱交換機は通常、チューブとフィンの組み合わせで構成されるが、近年主流となるマイクロチューブラジエーターは、チューブのみで構成される。これはチューブの本数を増やして表面積を増やし、冷却性を確保する考えである。

また2014年型からは、エンジン本体が発する熱は減る一方で、MGUが発する熱は増える。運動エネルギー回生用MGUで言えば2倍になるし、熱エネルギー回生用MGUが追加になる。
1周あたりに使用できるエネルギー量が10倍になるということは、エネルギー貯蔵装置(バッテリー)の働きも活発で、そのぶん熱が出るということ。
困ったことに、エンジン、MGU、バッテリーにそれぞれ適温が異なる。エンジンは120℃でもいいが、バッテリーは60℃以下でなければ困る。さらに熱交換機に用いる流体もなんでもいいわけではなく、バッテリーなら絶縁フルードが必要。
冷やしたいコンポーネントの事情に合わせて緻密に設計し、制御する必要があるし、熱交換機の数が増えるということは、漏れる確率が増えることを意味する。

こういったシビアな熱管理を保ちながらレースをしていることを頭に留めて、今後F1観戦をすれば、また違った楽しみ方が出来ると思いますよ。


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