F1メカニック講座 協調回生ブレーキ

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2014年テクニカルレギュレーションの追加項目として、
「リアブレーキコントロールシステム」
つまり”リアブレーキに限り、電子制御可”
ということで、これがいわゆる「ブレーキ・バイ・ワイヤー(B•B•W)です。
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2014年シーズン前半のケータハムの小林可夢偉は、開幕戦のオーストラリアでスタート直後の1コーナーで止まり切れず、ウィリアムズのフェリペ・マッサに追突しながらグラベルに飛び出しようやく止まった。
可夢偉は当初、「自分のミス」だと感じたようだが、後に「リアブレーキが効いていなかった」ことが判明した。
新しいシステムを投入したがために発生したトラブルである。

このシステムは「協調回生ブレーキ」と呼ばれていて、油圧ブレーキとモーター\ジェネレーターユニット(MGU)による回生ブレーキである。
前回数回にわたり紹介したパワーユニットのERS-K・運動エネルギー回生システムを利用している。
減速時に運動エネルギーを回生(発電)し、駆動時にはパワーをアシストするMGU-Kの出力は120kw。2013年までは60kwであったので駆動力が増せば当然、減速力も強くなくては制動時の安定性を欠いて危険なので電子制御してもいいことになった。
《ドライバーに残る”違和感”》
ドライバーがブレーキペダルに載せるとき、
「これくらいの強さでペダルを踏んだら、これくらいの制動力が発生するので、だいたいあのへんでこれくらい速度が落ちるはずだ」
とイメージして、イメージどおりにならない場合はペダルに込める足の力を調整し、イメージどおりの減速をつくり込むのである。
この時のイメージを「ドライバー要求減速度」という。

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〈従来の油圧ブレーキの場合〉
ペダルの踏み込み量に応じて単純に油圧を立ち上げればよい

〈協調回生ブレーキの場合〉
回生効率が最大になるよう回生ブレーキを優先しつつ、油圧ブレーキで不足分を補うように油圧を増減し制御する。
➡️コンピューターがドライバーの要求どおりに減速度を満たすように上手に制動しないとドライバーは違和感を覚える。
結果、「これじゃ乗れない!」となる。

さらに、協調回生ブレーキはギヤボックスを介していることが減速の制御を難しくしている。
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F1はドッグクラッチの入れ替えによって減速を行なう常時噛み合い式のギヤボックスを採用している。
減速時は大抵、ダウンシフトを伴う。減速した後、MGU-Kで回生するのだが、力が伝わりっぱなしだとクラッチを切ることが出来ないので、変速動作を行なう間は回生を中断し、クラッチを切り、変速して、クラッチをつなぎ、回生を再開するという制御を行なう必要がある。
ギヤを1速落とすのに約0.05秒で、
その間に高度な制御を行わなければならない。少しでもうまくいかないと、制動Gに変化が生じてしまう。
コーナー旋回中のブレーキング時に、この制動Gの変化は致命傷となる。
F1の協調回生ブレーキには、そうならないようなデリケートな制御が求められ、各チームはより優れた開発に精を出すのである。
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